人に説明することが苦手で、何故って自分ですらやり方が分からないからだ。

教えてもらった手順を真似てやってるだけ、つまりマニュアル通りにやってるだけだから『こうで、こうなるなら、こうすればいい』を具体的に説明出来ない。

その上人と話すことに緊張して相手の反応ばかり気にしてどうすればいいかを置いてけぼりにしてしまう。そうしてしっちゃかめっちゃかで、お互い頭の上にハテナマークが浮かんで終わる。

社会人 特に社員というのは入社したら誰しもが先輩から作業を教えてもらうものだ。たまにマニュアル見て作業しろって教えてもらえず自力で覚える例もたまに見かけたりもするものの大半は先輩に教えてもらう。そっちのほうが当たり前だと思う。

そしてそれを受け継いだ新入社員はいつしか日にちを重ねて新しく入社する人間の先輩となり、今度は自らが教える立場となる。

というか、正社員の頃そうなった。

苦痛で仕方なかった。

後輩は他の社員に教えを乞うてメキメキと力を身につけていった。そうしてテキパキと『正社員』として仕事を割り振っていった。いつしか私も割り振られる側になっていた。

羨ましくもあったし、楽でもあった。彼や彼女のように指示のできる人こそが逸材で会社が求めていたもの。

私はただ隅っこで、息を潜めて、機械的に作業をしていた。苦しくて、安心していた。

たまーに克服の一環として苦手なことをやったこともある。依然として地獄だった。泣いた。

 

と、まぁ昔のことを書いたことに理由はある。

今日死刑宣告を受けたからだ。

要約すれば「頼りになる人がもしかしたらいろんな事情で辞めるかもしれないから、その時は(本名)ちゃんに頑張ってもらうね☆」

 

その人の分の作業、アクシデントが起きた時の対応。そして何より不安なのがそう、人に教えることだった。

もしその有能な先輩が辞めたとならばその穴埋めに新しい人が入る。となれば教えるのは誰か?そう、私だ。きっと私だ。

確証はないがそんな気がする。どうしてかって?それは私に様々な手順を教えてくれた方が私よりやや早めに入った先輩だから。作業員の中で、私の、だいたい半年前に入った先輩だから。

そうとなればもし採用された人に今度教える立場になるのは私であろう。

詰んだと思った。予期せぬ最悪のシナリオ。まだ分からないが確定に近い展開。ああ、想像に難くない。

お願い先輩、やめないで。私に胃をキリキリさせないで。懇願したかった。しかし懇願できなかった。先輩にも先輩の事情があるのだから。引き止められるわけない。

どうなるか未知だけど、気が重い。